相続人の廃除
廃除
相続人の廃除とは
廃除とは、被相続人の請求または遺言に基づき、家庭裁判所の調停や審判手続により、遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)の遺留分を含む相続権を剥奪する制度のことです。
廃除が生ずる要件
廃除が生ずるためには、以下の4つの要件を満たしていることが必要となります。
a. 廃除の対象者が遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)であること
…兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹に相続させたくないという場合は、他の者に全財産を贈与または遺贈するか、相続させたくない兄弟姉妹の相続分をゼロと指定すれば足ります。
b. 被相続人に対する虐待・重大な侮辱その他の著しい非行といった廃除原因があること
…推定相続人の言動が被相続人に対する「虐待」、「重大な侮辱」、「その他著しい非行」にあたるかどうかの判断は、推定相続人がその言動をとった理由や、その言動が継続的に行われていたものかどうか等の事情を考慮して慎重になされます。
c. 被相続人が家庭裁判所に廃除の申立てをするか遺言で廃除の意思表示を行うこと
…相続欠格の場合と異なり、廃除は被相続人の請求または遺言が必要となります。遺言で廃除の意思表示がなされている場合は、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の申立てを行うことになります。
d. 廃除の審判または調停があること
廃除の効果
廃除の審判確定または調停成立が相続開始前になされたときは、直ちに相続権を失うことになります。相続開始後に審判確定または調停成立となったときは、相続発生時に遡って廃除の効果が生じます。
また、相続欠格の場合と同様、廃除の効果は特定の被相続人との関係でのみ相対的に発生するにすぎないため、他の被相続人に対する相続権を失いません。
また、廃除の効果は一身専属的であるため、廃除された者に直系卑属(子・孫等自分より後の世代に属する血族のことで、養子も含まれますが甥・姪・子の配偶者は含まれません。)がいれば、その直系卑属は代襲相続をすることができます。
ただし、相続欠格の場合と異なり、受遺能力(遺贈を受ける能力)は失わないため、被相続人の遺言によって財産を受け取ることはできます。
廃除の取消し
被相続人はいつでも家庭裁判所に廃除の取消しを請求することができます。
遺言によっても廃除の取消をすることができます。
遺言によって廃除の取消しをしている場合は、遺言執行者が取消しの請求を家庭裁判所に行うことになります。
廃除された相続人が取消しを申し立てることはできません。
取消しの理由は必要ありませんので、たとえ推定相続人による虐待や侮辱等の行為が継続している場合であっても、被相続人は廃除の取消しを請求することができます。
廃除の取消がなされると取消しの効果は相続開始時に遡って消滅するため、取消しの審判が被相続人の死後になされた場合であっても、相続人は相開始時から相続権を有していたものとして取り扱われます。
※廃除の申立てと同様に、廃除の取消しも家庭裁判所の判断によって確定するので、被相続人はできる限り遺言の方法によるのではなく、また、廃除(又は廃除の取消し)理由や証拠を明確にしておく等の工夫をすることが必要です。