相談事例78(吹田市在住の方からのご相談)母が亡くなり、子である私(妹)と姉が相続人となった。姉がずっと母の介護をしてきたので、私(妹)は近日中に相続放棄をして、姉に母の遺産を全て相続してもらう予定である。母は多数の宝石類を所有していたが、形見分けとしてこれらの宝石類を私(妹)が取得した後でも相続放棄することは可能か?

相談事例78(吹田市在住の方からのご相談)母が亡くなり、子である私(妹)と姉が相続人となった。姉がずっと母の介護をしてきたので、私(妹)は近日中に相続放棄をして、姉に母の遺産を全て相続してもらう予定である。母は多数の宝石類を所有していたが、形見分けとしてこれらの宝石類を私(妹)が取得した後でも相続放棄することは可能か?

相続財産を処分した後に相続放棄ができるとすると、相続人は優先的に積極財産のみを承継することが可能となってしまいます。
 そのため、法律上、相続財産を「処分」した相続人は、単純承認をしたものとみなされ(民法921条1号)、無限に被相続人の権利義務を承継しなければならなくなります(民法920条)。
 ここでいう「処分」には、遺産の売却のような法律的処分行為はもちろん、家屋や物品の毀損等の事実的処分行為も含まれます。
 形見分けは、親子や夫婦などの情愛に基づいた精神的価値に基づくものなので、当然には「処分」に該当しません。
 ただし、高価な衣類や宝石類等を分配した場合は、形見分けの範囲を超え、「処分」に該当する可能性があります。
 
 本件の場合も、形見分けの対象が母親の宝石類とのことですが、その数量や価額によっては「処分」に該当する可能性があります。
そのため、形見分けによって母親の宝石類を取得すると、母親の相続について単純承認をしたものとみなされ、相続放棄ができなくなるおそれがあります。
 なお、形見分けが「処分」に該当する可能性があるのであれば、あなた(妹)と姉で遺産分割協議を行い、「あなた(妹)が母親の宝石類のみ取得し、姉がその他の遺産を全て取得する」という内容の遺産分割協議を成立させるという方法も検討された方がいいでしょう。
 

投稿者プロフィール

大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
大阪千里法律事務所、代表弁護士の寺尾浩と申します。当事務所では、豊中市・吹田市・箕面市を中心に、多くの相続問題を多く取り扱っております。依頼者の想いを十分にお聞きし、その想いを実現するために徹底した調査を行い、 専門的知識・経験豊富な弁護士が、依頼者の想いが最も反映された解決案を提示し、 その実現のために、全力を尽くします。 |当事務所の弁護士紹介はこちら