相談事例25:は長男である兄にすべての財産を相続させる旨の遺言書を残して死亡したが、父の死亡前に兄はすでに死亡していた。兄には1人子どもがいるが、遺言により父の遺産は兄の子がすべて相続することになるか?

相談事例25:は長男である兄にすべての財産を相続させる旨の遺言書を残して死亡したが、父の死亡前に兄はすでに死亡していた。兄には1人子どもがいるが、遺言により父の遺産は兄の子がすべて相続することになるか?(吹田市在住の方)

相続開始時(被相続人の死亡時)に相続人となるべき者がすでに死亡している場合、死亡した相続人の子が相続人となります(民法887条2項)。これを代襲相続といいます。


代襲相続が認められるためには、被相続人の直系卑属であること、すなわち、子・孫など被相続人より後の世代で、直通する系統の親族であることが必要です。遺産を特定の相続人に相続させる旨の遺言がなされた場合にもこの代襲相続が認められるかどうかが問題となります。
 

最高裁は、遺産を特定の推定相続人に単独で相続させる旨の遺言をした遺言者は、通常、遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるとして、遺言者が推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、遺言の効力を生ずることはないと判断しました。
 

本件の場合、遺言者である父親が、長男が死亡した場合には長男の子にすべての財産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、遺言によって長男の子がすべての遺産を相続することはありません。
 

ただし、遺言の効力が生じなくても、長男の子は代襲相続により相続人にはなりますので、長男の子と遺産分割協議をする必要はあります。

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大阪千里法律事務所 寺尾 浩(てらお ひろし)
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