相談事例75(箕面市在住の方からのご相談)母が亡くなり、私(弟)と兄が相続人となった。母の遺産はほとんどなかったが、母は亡くなる直前に不動産の登記名義を長男に移転していた(贈与)。母は生前認知症がかなり進行していたため、母の兄に対する不動産の贈与は無効と考えているが、この場合でも兄に対して遺留分減殺請求をしておく必要はあるか?
相談事例75(箕面市在住の方からのご相談)母が亡くなり、私(弟)と兄が相続人となった。母の遺産はほとんどなかったが、母は亡くなる直前に不動産の登記名義を長男に移転していた(贈与)。母は生前認知症がかなり進行していたため、母の兄に対する不動産の贈与は無効と考えているが、この場合でも兄に対して遺留分減殺請求をしておく必要はあるか?
遺留分減殺請求権は、「相続の開始」及び「減殺すべき贈与又は遺贈があったこと」を知った時から1年で消滅時効にかかります(民法1042条)。
「減殺すべき贈与又は遺贈があったこと」を知った時とは、①「贈与又は遺贈の事実」及び②「贈与又は遺贈が自分の遺留分を侵害し減殺することができるものであったこと」を知った時と考えられています。
また、②について、最高裁は、被相続人の財産のほとんど全部が贈与されていて、遺留分権利者がその事実を認識している場合には、「(無効の主張について、一応、事実上及び法律上の根拠があって)遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともと首肯し得る特段の事情」が認められない限り、②を知っていたものと推認するのが相当であるとしています。
本件の場合、母親の兄に対する不動産の生前贈与が無効になると考えていたとしても、最終的に同贈与が無効となるかどうかは現時点では不明です。
また、「遺留分減殺請求権を行使しなかったことがもっともと首肯し得る特段の事情」は生前贈与が無効と考えている場合に必ず認められるわけではありませんので、遺留分減殺請求権を行使しないままでいると遺留分減殺請求権が時効消滅してしまう可能性もあります。
そのため、母親の生前贈与の有効性について争うとともに、遺留分減殺請求もしておいた方がいいでしょう。
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